星の王子さまの本、日本の題名は「星の」王子さまとなってるから夢物語のような雰囲気を感じるな。でも、原作の題名には星のほの字も書いてないわ。なぜ日本語版と原作で題名が違うの?
Bonjour ! 星の王子さまの原作と日本語版で題名が違うのはなぜなのか?この記事では名称が違う理由と本来の正式な題名をお伝えします。原作の題名を知ることで、王子さまの存在を身近に感じられるかもしれません。
本の題名は物語のイメージを左右する正に看板といえ、それが日本と原作、諸外国語で違うというのは何でなのか、どちらが正しいのか、疑問に思うところです。
実は〈星の王子さま〉というロマンチックな名称で親しまれているのは多くの日本語版独自のことで、原作のフランス語では
Le Petit Prince / ル プチ プランス=小さな王子 という意味です。
王子「さま」って敬称をつけると高貴な身分のように聞こえるけど?
星の王子さまの原文による正式な名称は
日本語版の題名〈星の王子さま〉は日本独自のもの
正式な題名は〈小さな王子さま〉ちょっと外れるけど〈小さな王子君〉
では、日本版と諸外国版でなぜ題名の名称が違うのか?理由と経緯をお話ししましょう。
フランス語の「小さな王子」とは何を意味するのか?
フランス人であるサン=テグジュペリによる物語ですから、フランスの日常をちょっと知っておくとすぐわかります。
星の王子さまの名称が違う理由1ーフランスの生活習慣
フランスでは親しい人にあだ名をつけて呼ぶ習慣があります。それは日本の、名前の音をもじったりして呼ぶのとは違って、得意なことや才能への敬意も込められたりする呼び名=愛称をつけるのです。
例えば、私の騎手(乗馬の)、僕の妖精、僕のスター、私の詩人、僕のお姫さま・・・家族の間でこんな調子です。
ちびっ子には、愛称の前に男の子なら petit/プチ=坊や をつけて、petit pilot/小さな飛行士(パイロット)
女の子なら petite/プチットゥ=お嬢ちゃん をつけて petite chanteuse /小さな歌手 と呼んだりします。
petit (女性形はpetite) は、英語では little に当たります。
そこで、星の王子さまの飛行士は砂漠で出会った男の子を「王子君」=petit prince /プチ プランス
と呼ぶことにしたのでしょう。
原文の中で、飛行士である『僕』が王子さまに呼びかける時は
(Mon) petit bonhomme =坊や
と言っています。例えば、砂漠で水の最後の一滴を飲み干して命の危機さえ迫っているのに、王子君の頭の中は友達になったキツネのことでいっぱいな様子。『僕』は王子君が飢も渇きも知らないのだと思って、諭すように出た言葉が
Mon petit bonhomme =坊や、あのねえ、今はキツネのことを話してる場合じゃない・・・
といったニュアンスです。
なので、日本語に直訳した題名が「小さな王子」が意味するのは一人の小さな子どもを呼ぶ表現のひとつで、身分の高貴さなどを示してはいるのではない、ということです。
あどけない男の子ってところかな。そういえば〈リトル ダンサー〉って英国のバレエ少年の映画があったわね。
星の王子さまの名称が違う理由2ー日本で初めて翻訳された題名に「星」が
日本で初めて Le Petit Prince を翻訳した人、内藤濯氏が題名を〈星の王子さま〉として有名になったので、その後の翻訳本の題名も概ねそれに沿っているようです。
もちろん、王子さまが小惑星B612からやってきたという筋書きにおいては、異星人の子どもということになりますが、これについては別の機会でお話しします。
日本の翻訳者の中にお二人、それぞれのお考えで独自の題名をつけた方がおられます。
恐らく、異星人を意味するのではない、フランス語が意味する「小さな男の子=坊や」を題名に入れないわけにいかないと思われたのでしょう。題名も翻訳箇所の重要なものですものね!
日本版で「星の」というロマンチックな名称で知られることで、多くの人に読まれるきっかけとなったかもしれませんね。
でもね、星の、ということで、本来は近しい人を表すはずの「僕の王子さま」というニュアンスが、とても遠い人のように感じられるのです…
日本の翻訳者さんたち、フランス語が意味することより美しい日本語を優先しちゃったのかしらね。
原文に添った名称にこだわった星の王子さまはアツイよ
星の王子さまの翻訳は他の著名な本と比べて特に翻訳者の人生経験、語学経験、芸術感など「魂」というのは大袈裟かどうかわかりませんが、「その人」が如実に現れ、同じ物語とは思えないくらい、と感じていますので、タイトルにもこだわる翻訳者さんの本は手に取ってみるとよいと思います。
ある翻訳本は途中で読むのをやめたが、他の翻訳で良さがわかった、というのは本当にあります。星の王子さま好きも挫折した人も、まずは読みやすいと感じる翻訳を手に取ってみて欲しいと心から願っています。
フランス人もびっくり。星の王子さまの正式な名称 まとめ
原文による正式な題名は
Le Petit Prince (Le は男性名詞の前につく冠詞。名前ではない)
ル プチ プランス
日本語に訳すと:小さな王子さま または、小さな王子君
映画などでは元のタイトルより邦題がとても美しいものもあり、日本人の情緒や感性に感嘆することもあります。
しかしながら、フランスの人にこのタイトルの違いを話すと、誰でもかなり驚きます。だって、意味がまるで違ってしまうから。
Le Petit Prince をこよなく愛する者としては、「星の」と定義してしまうことで、肝心の「男の子=王子さま」の存在が物語の真意から外れていってしまい、そのことで、この本の「訳が分からない」と感じてしまう読者を少なからず生み出しているような気もするのです。
そうなのよ!星からやってきて飛行士とどんな物語が始まるのかと思えば、全然そんな話じゃないじゃない?
私も初めて読んだ時からどれほどの歳月が過ぎたことか、それなのに今も発見が尽きないので、星の王子さまが何を言いたいのか訳わからない人の役に立ちたいと思っています。それで今回、大事な本のタイトル:名称について書いておかねばと思いました。
星の王子さま書籍
読書・翻訳本
フランス語朗読CD付き書籍
- 河原康則氏:小さな星の王子さま
CD1枚、抜粋の朗読。若手俳優ステファノ・ファッコ氏の聴きやすく心地よい声と朗読。フランス語原文を聞いてみたい方にもとてもオススメです。 - 小島俊明氏:対訳フランス語で読もう「星の王子さま」朗読CDセット版
CD2枚全編朗読2時間10分収録。名優ベルナール・ジロドー氏朗読、音楽挿入あり。サン=テグジュペリの音声あり。
星の王子さまでフランス語を学ぶ書籍
お読みいただき、ありがとうございました。
Merci et à bientôt !